岡本が実践してきた前立腺癌小線源治療のこれまで

■滋賀医科大学時代に確立した岡本メソッドによる前立腺癌小線源治療の実績

私は2005年より限局性前立腺癌に対する密封小線源(I-125)の永久挿入療法(以下シード治療もしくは小線源治療と略す)を開始し、独自の高精度小線源療法を開発し、Ten-step methodとして国際誌にも公表しています (https://aapm.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/acm2.13224)
その治療効果に対する大きな信頼から、滋賀医科大学を辞する2019年末まで北海道から沖縄まで全国から多数の患者さんが私の小線源治療をもとめて来院されていました。

さらに私は2015年1月からは前立腺癌小線源治療学講座をたちあげ、年間140例を超えるの治療をおこない国内有数のハイヴォリュームセンタとして小線源治療をリードしてきました。前職滋賀医大の最終年である2019年は1月から11月末までしか治療ができなかったため、私が執刀した年間治療数は117症例にとどまりました。これは滋賀医科大学泌尿器科が企てた前立腺がん患者さんへの人権侵害および不正行為が原因であり、これに対し滋賀医大学側は大学トップ(学長及び病院長)が、末端の放射線治療医をも巻き込み、唯々己の保身に汲々とすることのみに血眼となり、結果として倫理観の欠損した情けないとしか言いようのない組織ぐるみの不正隠蔽行為という暴走を続け、法廷や大学ホームページにおいて、患者会側やメディアから失笑されるような見苦しくも卑しい虚偽証言と”でっち上げ”を展開し続けました。この一連の不正行為と不正隠ぺいのための茶番としか言いようのない虚偽工作は大津地方裁判所の判決文において論破、一蹴されました。これら滋賀医大に下された一連の司法判断について関心をお持ちの方は患者会ホームページを御覧になってください(裁判所、実質、説明義務違反認める – 前立腺がん小線源治療患者会 (syousengen.net))。

さて、これ以降私のおこなってきた小線源治療について詳しく説明いたします。米国において小線源治療は前立腺癌に対する放射線療法として確立され、既に20年以上を経過し、限局性前立腺癌の一般的な治療法として広く行われていますが、私は前職において1238例の患者さんに小線源治療をおこなってきました。その経験を通して、小線源療法は高い経験と技術を持っておこなえば、体への負担が軽いばかりでなく、安全かつ有効性のきわめて高い治療法であり、他の治療法でに比べて圧倒的に完治率が高いというデータを国際雑誌に発表してきました。

前立腺癌の治療でもっとも大切なことは最初の治療で確実に再発なく完治させることです。なぜなら、初回治療で再発した前立腺がん患者さんは再発後、救済療法を受けたとしても 多くの場合、再発 再再発という道をたどるからであります。われわれの多数の治療経験や海外のデータから小線源治療は適切に他の治療と組み合わせることにより、悪性度の高い癌 (中間リスク前立腺がんや高リスク前立腺がん)であっても非常に高い根治率(非再発率)が得られることがわかっています。ここでは小線源療法の内容と私が確立した小線源治療の特徴について説明いたします。

 

前立腺癌小線源治療の歴史

小線源療法とは小さな放射性物質を治療する局所に挿入して行う放射線治療を意味します。英語ではブラキセラピー(brachytherapy)と呼ばれていますが、ブラキ(brachy)とは「近接した」という意味で放射線源と照射目標が短いことからこのように呼ばれています。日本でも古くから、舌癌や婦人科の癌に対してラジウム、セシウム、金などの放射性物質を用いた小線源療法が行われてきました。

1970年代にアメリカで前立腺癌に対する(I-125)を密封した小線源(シード線源)を前立腺の中に挿入して照射を行う組織内放射線療法が開始されましたが、当時の方法は下腹部を切開し直視下に線源を留置して行う方法であり、線源を目算で挿入していたため線源分布が不均一となり、効果が不十分で広く普及するには至りませんでした。

超音波画像により正確にシード線源を挿入

その後、直腸に超音波端子を挿入する前立腺用の経直腸エコーが開発され、前立腺の超音波画像が鮮明に得られるようになりました。これにより超音波画像を見ながら会陰部(肛門と陰嚢の間の股の部位)から前立腺内に針を刺して、そこからシード線源を挿入することが出来るようになりました。皮膚切開を必要とせず、しかも前立腺に正確に線源を留置することができるようになって治療成績が飛躍的に向上したため、1990年代になってI-125を用いた小線源療法は年々増加の傾向をたどっていました。

現在の前立腺がん治療の問題点

しかしながら世界的に見てもロボット手術や重粒子線治療など高額機器を使用する治療を推奨する趨勢が支配的となっています。さらに質の高い小線源治療を実施するには術者に高い技術が求められることから日本でも世界でも高精度の小線源治療ができる施設が減少し、また実施件数も減少傾向にあります。つまり前立腺がんを患った方々の願い(再発の少ない治療を受けたいという希望)を顧みず、医療業界がハイテイク高額治療機器の導入・運用を優先するという潮流に支配されてしまっているのが現在の前立腺がん治療の現況です。ハイテク機器を運用した治療の成績、特に非再発率が良好であればよいのですが、現実はそうとはいえません。Crookらが記した総説によればハイテク治療の急速な導入が続いているにも関わらずPSA検診で発見され根治治療を受けた前立腺がん患者さんのなんと40-60%が再発(そのほとんどが局所再発)をしていると報告されています(JM Crook et al., Transl Androl Urol 2018)。このことはPSA検診を通じて前立腺がんと診断された患者さんとそのご家族にとっては誠に不幸な状況といわざるを得ません。私は論文の中でも初回治療の大切さや再発によってもたらされる深刻な肉体的、経済的、心理的負担の問題を訴えてきました (Emergence of Quality Low-Dose-Rate (LDR) Brachytherapy: Ultimate Radiosurgery for Non-Metastatic Prostate Cancer (iomcworld.org)

独自に改良・発展させたリアルタイム術中計画法により、安全に高い放射線エネルギーを照射

 さて、小線源治療に関しては2004年以降、ニューヨークマウントサイナイ医科大学を中心に開発されたリアルタイムによる術中計画法により、きわめて高い精度で線源が前立腺に配置できるようになりました。これにより、非常に高い放射線エネルギーが、安全に照射できるようになりきわめて高い治癒率が得られるようになっています。私は前職滋賀医科大学時代にリアルタイム術中計画法を発展させて独自の治療プログラム (Ten-step method) を開発し、被膜外領域(癌が被膜の外へ浸潤した領域)や精嚢浸潤も治療することにより難治性の前立腺癌症例を含め多数の患者さんの治療をおこなってまいりました。

 

リアルタイムによる術中計画法による超音波画像と、治療後のX線フィルム